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医療と消費者契約法

理事長 土谷晋一郎

平成12年4月28日、国会において消費者契約法が成立、5月12日に公布され、平成13年4月1日から実施されることになりました。この法律は、社会問題となっている悪徳商法や、悪質なキャッチセールスなどを行う事業者から消費者を守ることを目的に作られました。消費者契約法の仕組み上、医療機関も事業者として、この法律の適用を受けることになりました。医療契約の際に契約書面を取り交わすことを義務づけるものとはなっていませんが、法律の上から、医療行為は、患者様と医療機関との間の契約に基づいて行われるものであるという原則が、明示されました。海外では、英、仏、独において制定されている消費者契約に係る法律では、医療契約も適用対象となっており、米国においては、判例法で、医療契約に契約法が適用されています。消費者契約法の適用が除外されるのは、

  1. 特別の法律によって患者が入院等を強制されている場合、例えば、結核予防法に基づく命令入所や麻薬及び向精神薬取締法に基づく入院措置など
  2. 予め法律で受診が義務づけられている場合、例えば、労働安全衛生法上、労働者が受ける健康診断など
  3. 事務管理が成立する場合、例えば、意識不明の患者を救急外来で診療する場合など

といったケースに限られています。

これを受けて厚生労働省では、医療機関が保険適用外のサービスにかかった実費を患者から徴収する際の範囲や手続きについての運用指針をまとめています。「お世話料」や「レクリエーション代」といった不透明な費用を、患者が請求されることがないように、この指針では、サービスの範囲が具体的に定められています。指針は医療機関が徴収できる実費として

  1. テレビ代、理髪代、クリーニング代、おむつ代などの日常生活に必要なサービスの費用
  2. 診療録の写しにかかる開示手数料や文書の発行代金などの保険と関係ない文書手数料
  3. 在宅医療に要する交通費や薬の容器代などの医療機関が本来保険に請求できない費用

を例示しています。また、徴収の手続きも厳格化し、受付窓口や待合室に実費徴収の対象となるサービスを掲示し、その内容を患者に、懇切に説明し、料金などが記載された文書に患者の署名を求め、支払いに同意していることを確認するように促しています。

消費者契約法は、不当な契約関係から消費者を早く離脱させることを目的とする民法の特別法であり、医療の場面で考えられるのは、

  1. 契約締結課程での不当な行為
  2. 消費者に不当に不利な契約内容

の2点です。1.契約を結ぶまでの段階については、厚生労働省の指針と重複しますが、入院時の差額ベット代、テレビ使用料金などについての説明が不十分であったり、美容整形手術、分娩など、特に保険適用外の医療の料金や方法等について、予め明確な説明をしていないといったことが、想定されており、この場合、消費者(患者)は、その契約を後から取り消すことができます。2.契約の内容に関することとしては、手術、検査などに際し、消費者(患者)から「万一、予期せぬ結果が生じても一切異議を申しません」といった内容の証書を差し入れさせることや、診療料の支払い遅延などの場合の違約金、損害賠償金の額を高額に設定することなどが考えられています。この場合、これらの内容は、最初から無効なものとして扱われることになっています。

消費者契約法は、日頃、誠実に医療提供に取り組む医師・医療機関にとっては殆ど無縁のはずの法律であります。この消費者契約法の成立は、我々にとって、患者様が利用しやすく、自由な意志に基づいて契約を結べる環境を整え、医師およびその他のスタッフが、治療内容について患者様に懇切丁寧に説明するという医療機関にとって当然の事が、ごく自然にこなせているかどうかを再確認する、良い切っ掛けであると思います。医療機関として、患者様へのより一層の情報提供に努めるよう日常診療の見直しを行い、医療の質の向上と患者様へのサービスの向上に、日々努力しなければと考えております。