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医療安全対策について

理事長 土谷晋一郎

患者様の安全を守るために、厚生労働省は、今年2001年を「患者安全推進年」と位置付け、医療関係者に、共同行動をとり、総合的に医療安全対策を推進するよう指示しております。すでに73%の病院で安全管理体制確保のための委員会の設置が終わっており、リスクマネージャーを配置し、安全管理を目的とした院内報告が実施されはじめております。しかしながら、具体的かつ効果的な対策は、これからといったところであります。まず、医療事故のリスクを減らすためには、罪人を捜してその人を非難するという体質から、監視と協力の体質に変えていくことが必要です。システムのどこに弱点があって、こういった医療事故が起こるのか分析し、複雑な医療行為のなかから事故原因となりうるステップを除外していくことが大切です。

医療界が参考にすべきと考えられているのが、航空機のリスクマネジメントであります。航空機の事故では、3つのリングという有名な話があって、大きな航空機の事故が起こる前に、必ず3つ以上の小さいトラブルが連続して起きている(chain of event)といわれております。パイロットは、いわゆるヒヤリハットのような出来事(インシデント)を報告することが義務づけられていて、この集められたインシデントを分析して早い時期にchainを断ち切る作業を行い、航空機の安全を守っています。さらに、コックピット・リソース・マネジメント(CRM)が行われています。コックピットの中で、機長が絶対的な権力を握っていたために、ほかの人たちがおかしいと気がついても注意できないという人間関係があったために、事故につながったことがたくさんあったといわれていました。このCRMでは、コックピットのなかの人間関係をできるだけ並列な人間関係にすることが、ヒューマンエラーを防ぐために最も大事なことであるといわれており、そのための訓練が行われています。

ところで医療事故が発生した場合、日本では警察に届出しなければならないことになっています。米国には警察への報告義務はなく、日本人は、警察への届出は当たり前だと思っていますが、外国からみるとおかしいといわれています。また、インシデント・アクシデントレポート(医療ミス報告書)が、医療事故の証拠保全にされる事例があり、現実として医療ミス報告書は、法的に開示の対象外とされていません。事故防止のためには、正確で正直なニアミス報告は、不可欠なのですが、正直に報告した人が、法的に守られていないのです。報告書の免責制度化を国に要望する動きがでてきていますが、対応策として、ニアミス報告書には、報告者名も患者名も記入しないとする病院が増えてきています。

個人を責める社会、文化があり、医療者を書類送検しているという現状があり、国としての対応策が欠けているのも事実ですが、医療現場にいる我々としては、ともかく早く改善する必要に迫られています。先ほどの航空機業界の話では、機長に求められるリーダー像がはっきり描かれており、これは医師に共通すると言われています。どういうリーダー像かといいますと、誇り高く責任ある行動ができる人、創造的思考に基づいて判断し行動する自立した人、自分を律することができる人、それから学習能力の高い人、何が問題かを自ら見出して、それを自分で解決する道を探し出せる人だと言っております。さらに、患者様の安全な医療を考えたときに、医師はキュアで、看護婦はケアで、技術者は自分の技術を提供し、他の医療従事者も自分たちの力を提供することで、患者様の治療が行われているわけですから、医師も看護婦も技術者もほかの職種の方々もみんな役割を分担しているのだという意識をもって、人間としては水平な、並列関係を作り、お互いに自由に注意し合える人間関係を作ることが重要だと提言されています。医療安全対策は、我々にとって非常に重要なテーマで、医療安全対策に少しでも役立ちそうな事は、どんどん取り入れていかなければと強く思っております。