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診療報酬個別契約

理事長 土谷晋一郎

厚生労働省は、2003年5月20日、医療サービスや診療報酬に関する保険者と医療機関の個別契約について、認可基準や手続きなどを各健康保険組合に通知しました。これにより、診療報酬単価の1点9円への引き下げなど、組合加入者が契約医療機関で医療費の割引を受けることが可能となりました。保険者と医療機関の個別契約については、かつて国民病と言われた結核の治療に関し、健康保険法第七十六条三項を根拠条文として、国立療養所で医療費の2割引、その他で1割引が行われていました。その後、1957年5月健保法改正の際の通知で新たに拡大しないことが示され、以来同省が認可した例はありません。2002年 3月、小泉政権は、「規制改革推進三ヵ年計画(改定)」で、フリーアクセスの確保に十分配慮した上で、診療報酬個別契約を2002年度中に解禁することを閣議決定しました。厚生労働省としては、いつまでも閣議決定違反するわけにはいかないので、それに、もともと健保法で定めていることなので、フリーアクセスの確保に十分配慮して通知を行なったというお話です。

割引契約の中身について、厚生労働省保険局では、「何割まで割引していいかではなく、個別具体的に判断したい。典型的な例としては、診療報酬単価の1点 10円から9円への引き下げ等が考えられ、その他はイメージがわかない。」とコメントしています。一部負担金のみを2〜1割に減額したり、免除することは療養担当規則に反するとして禁止しており、特定の診療科や疾患に限定した割引も認められていません。厚生労働省は、個別契約の認可にあたっては、このように厳しい条件を課しているので、実現へのハードルは高く、個別契約が主流になることはないとの見方を示しています。

ところで、日本国の国民皆保険制度は、世界に誇るべき、日本民族の叡智の賜であります。アメリカ合衆国では、人口の15.3%、4300万人が、健康保険を持たない、無保険者(中途半端に収入があるためにメディケイドの受給資格はないものの、自己負担で民間医療保険に加入する経済的余裕もない人々)であり、人口の12.6%、3300万人がメディケイド(貧困層対象の医療保険)の保険者です。メディケイドは、出し惜しみで悪名高い医療保険です。日本国では、2003年、平成15年4月より健康保険の自己負担率が改悪され、3〜69歳で3割、3歳未満で2割、70歳以上で1割(ただし夫婦で630万円、単身で380万円以上の年間収入がある場合は、2割)とされました。ご存知のとおり日本国の高齢化は進む一方で、現在、社会保障費78兆円のうち20兆円歳出している国税が、今のままのシステムでは、2050年頃には、100兆円が必要になると試算されております。もうすでに、自己負担部分をターゲットにした民間保険が登場していますが、今後加速し、増加した自己負担部分をカバーする新種の民間医療保険がでてくるでしょう。

今回の個別契約の認可基準等に関する通知は、アメリカ合衆国の医療制度を追い始めているような気がします。アメリカ合衆国に民間医療保険が誕生したのは、 1929年のことで、テキサス州ダラスのベイラー大学病院が学校教師の組合と保険契約を結び、これが、最初の民間医療保険ブルークロスの誕生に至りました。その後、営利医療保険会社が誕生し、病歴価格決定方式を導入していきました。疾病経験がなく、健康で罹患リスクの少ない者は保険料が安くなるというシステムです。若年層は保険料の低額さを理由に民間営利医療保険会社を選ぶことが多くなり、後発でしたが、保険加入者が著しく増加していきました。その後、医療費の増加幅が大きくなると、民間営利医療保険会社を中心に、医療費削減のため1983年にはDRG/PPSが導入されました。このように、市場原理を導入したアメリカ合衆国が大きな問題を抱えていることは、すでに日本にも伝えられてきています。アメリカ合衆国の医療費は年間120兆円(1兆ドル)で、日本の医療費は30兆円ですが、人口が約2倍ですので、国民1人あたりの医療費は、日本はアメリカ合衆国の約半分です。また、GDPに対する社会保障公費(国税)の支出の割合は、日本3.8%、アメリカ合衆国6.8%、イギリス7.0%、ドイツ12.4%と先進国の中では極めて低い社会保障になっています。すなわち、いままで先進国の中では、極めて効率的に医療を行ない、しかも国民皆保険制度を維持してきたわけですから、今後も国民皆保険制度を維持しつづける原則のもとに、患者本位の医療をまず第一に考え、日本国独自の社会保障を模索していくことが最善の道と思います。