いま求められている医療の最高レベルを目指すとともに、明日の医療のあり方 に機能しよう/医療法人あかね会

あかね会TOP > 理事長のあいさつ

<<NEXT |一覧| PRE>>

医療制度改革大綱について

理事長 土谷晋一郎

平成17年12月1日政府・与党医療改革協議会は、医療制度改革大綱を発表いたしました。急速な少子高齢化、経済の低成長化等の大きな環境の変化に直面する現状を踏まえ、医療費の伸びを著しく抑える方針が打ち出されました。OECD「HEALTH DATA 2005」で、2002年OECD加盟30カ国の総医療費の対GDP比(%)を比較しています。1位はアメリカで、総医療費がGDPの14.6%に達しているのに対し、日本の総医療費はGDPの7.9%、17位となっています。

また、WHOの統計では、2002年の日本の平均寿命は81.9歳、健康寿命は75.0歳で、人口100万以上の149カ国中、どちらも世界1位となっています。日本の医療費は先進国の中でも最低レベルであるにもかかわらず、世界一の長寿を達成しています。日本国の医療保険制度のコスト・パフォーマンスは非常に高いものになっているのです。しかしながら、政府は、公的医療保険給付の伸びを直接的に抑制するため、患者負担増と非常に厳しい医療費削減を推進しています。

医療費削減のための中長期的方策として、予防の重視と平均在院日数の短縮を図ることなど、計画的な医療費の適正化対策(削減)を推進することが織り込まれています。2000年にスタートした健康日本21では、2010年度を目途として、生活習慣病及びその原因となる生活習慣等の課題について、9分野で数値目標を設定していますが、2005年現在、達成率がはかばかしくありません。この改革大綱では、「糖尿病・高血圧症・高脂圧症といった生活習慣病の予防を国民運動として展開し、運動習慣や食育の推進を含め、バランスの取れた食生活の定着を図る。」としています。

11月18日付の新聞に、「与党内で17日、来年度の税制改正でたばこ税引き上げ論が浮上した。値上げで消費を抑え生活習慣病などの予防を狙うほか、増収分をがん対策に充てることも検討している。」と記載されていました。現在の医療保険制度は、きちんとした健康管理をした人が健康管理を怠った人の費用を負担する構図となっており、制度の公平性に問題があることが指摘されています。このたばこ税引上げ論はそういう意味では理にかなっていると思います。

ところで、現在、広島市では、夜間・休日の救急医療が危機的状況になっております。広島市社会局が中心となって、内科救急医療体制検討委員会が開催され、広島市の夜間・休日の救急医療体制をどう維持するか検討している状況であります。夜間・休日の内科救急医療を支えてきた広島市立舟入病院がパンク状態で、広島大学病院・医師会から、応援の医師を派遣してもらって何とかやりくりしていたのだけれども、とうとうやりくりがつかなくなって、検討会が開催されることになった次第です。

さて、この改革大綱では、さらなる患者負担増と医療費圧縮が主題になっています。これでは、危機的状況にある救急医療体制が完全に崩壊してしまうのではと危惧せざるを得ません。そもそも広島市の内科救急医療の問題は、医師不足から発生しています。現在、小児科・産婦人科・麻酔科等では、医師不足が深刻です。へき地での医師不足に対しては、国公立大学医学部での地域枠設定、遠隔診療の導入などの対策が考えられていますが、相変わらず、へき地医療は厳しい状況です。最近、救急医療の中心的存在である中堅医師が、大量に開業する傾向があり、救急医療の現場に混乱をきたしています。

さらに、昨今、女性の医師が年々増加しており、今年は医師国家試験合格者の3分の1が女性となってきました。女性は、出産・育児の時期になると、フルに働くのが難しくなるのは自明のことですから、医学部の定員を増やさなければならないのは、明白です。女性医師が増えた先進国では、すでに医学部定員を増やして対応しているのですが、日本国ではまだそのきざしすらありません。「医学部定員を削減する」という閣議決定に縛られたままです。

医療制度改革を議論するにあたっては、まず今目の前にある危機(救急医療体制の問題等)に本格的に取組むことが必要です。次に、感染症が主であった時代に設計された医療制度を、慢性疾患が大部分を占めるようになった現状にマッチした、新しい医療制度を構築した上で、負担の問題と医療費削減を考えるべきだと思います。