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広島透析患者肝炎スタディ

理事長 土谷晋一郎

1999年から2005年にかけて、「広島透析患者肝炎スタディ」が実施されました。肝炎ウイルス研究の第一人者である吉澤浩司教授(広島大学大学院疫学・疾病制御学講座)、頼岡コ在教授(広島大学大学院腎臓病制御学講座)が発起人となられ、広島県内の有志が広島透析スタディグループを結成して行なったものです。C型肝炎ウイルス(HCV)感染には、@血液を介して感染する、A感染既往者にも再感染する、Bいったん感染すると、半数以上の人はキャリア化する、という特徴があります。透析患者さんは、腎性貧血を合併している方が多く、エリスロポエチン製剤が開発される以前は、輸血が大量に行なわれておりました。この頃は、C型肝炎の正体が明らかになっておらず、透析患者さんの集団では、HCVキャリアが累積しておりました。HCVは、主として血液を介して感染するため、血液による汚染が起こる可能性のある全ての経路を遮断することが、HCV感染防止対策の基本です。このためには、設備、環境の見直しと改善並びにスタッフへの教育訓練の実施が必要です。

1999年より、9つの透析施設の全患者(延べ2,744人)に対し、3ヶ月に1回採血し、HCVキャリア率・HCVキャリアの新規発生をチェックしました。2003年の中間報告では、HCVキャリア率が、1999年15.7%(262/1,664)、2003年12.9%(242/1,882)、HCVキャリアの新規発生が、0.33人/100人年(16人/58,720人月)でした。C型肝炎ウイルス対策に熱心な施設が参加したこともあり、HCVキャリアの新規発生は、全国平均(3.6人/100人年)を大幅に下回っていました。1999年から2003年にかけて、HCVキャリア率の低下がみられましたが、これは、肝炎スタディに、新たに転入してきた患者のHCVキャリア率が低かったためです。

2003年の中間報告の後、吉澤教授の指導の下、透析設備・環境の見直しと改善、スタッフへの教育訓練を行ないました。設備、環境などの見直しと改善については、@透析室の区域化、A患者グループ毎の使用ベッドの固定、Bベッド間隔の確保、C手洗い場の改善(手洗い場の増設、手動式カランから足踏み式ないし自動カランへの変更、ペーパータオルの設置)、D廃棄物置き場の改善(廃棄物運搬の動線距離の短縮、清潔域と不潔域の区分の徹底)、E器具、機材の改善(透析回路をニードルレスタイプとする、コッヘル・駆血帯の適正配備)、F消耗品のセット化(透析開始時・終了時の消耗品のセット化)、等を実施しました。スタッフへの教育、訓練については、@清潔域、不潔域の区分の徹底(清潔物と不潔物との扱いの習得、清潔域・不潔域での各種操作手順の習得)、A手洗いの意味とタイミングの習得、B手袋着脱の意味とタイミングの習得、C予防衣着脱の意味とタイミングの習得、D環境、機械、器具、用具を介した汚染拡大の防止法の習得(床・テーブル等の適宜清拭、透析終了後ごとのコンソールの清拭、記録用紙・ペン等を介した汚染拡大の防止)、E写真集(スライド)を用いた繰り返し講習の実施(無菌操作の実際を習得)、等を行ないました。

この感染防止対策実施によって、我々は、C型肝炎院内感染の制圧に成功しました。今後の課題は、透析治療に新たに従事するスタッフへの教育・訓練を怠ることなく継続することであります。この点についても、吉澤教授が、すでに、DVD(透析施設におけるC型肝炎ウイルス感染防止のために)を作成されました。2006年4月の診療報酬改定では、またしても透析関連の診療報酬が大幅に下げられており、医療安全確保にかかるコストは、考慮されませんでした。(医)あかね会では、中島土谷クリニック(透析ベッド160床)と大町土谷クリニック(同140床)のコンソールを、全てJMS社製GC110-N(2006年度日本臓器学会技術賞受賞)に切り替えました。自動化(医療安全を機械によって徹底)による省力化(人手を減らす)は、「効率的に良質の医療を提供する。」上での一つの方策のような気もします。