いま求められている医療の最高レベルを目指すとともに、明日の医療のあり方 に機能しよう/医療法人あかね会

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後期高齢者医療制度

理事長 土谷晋一郎

2005年9月11日の総選挙で、小泉自民党が圧勝した後、患者・高齢者・保険者・被保険者の負担増と医療給付費抑制が打ち出されました。2005年10月19日厚生労働省による「医療制度構造改革試案」の発表、そして12月1日には政府・与党から「医療制度改革大綱」が発表され、その後、自民党厚生労働部会などでの介護療養病床廃止反対論を押さえ込んで、2006年2月10日「医療制度改革関連法案」の閣議決定・国会上程となりました。この「医療制度改革関連法案」の中で、柱となるのが、「高齢者の医療の確保に関する法律」です。老人保健法が全面改正されて誕生した法律で、特定健康診査・特定保健指導、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者医療制度などが盛り込まれています。小泉元首相は、イギリスのサッチャー元首相と同じ様な改革推進を考えていたのかもしれません。

イギリスの医療崩壊は、サッチャー政権の改革によると言われています。かつて、「ゆりかごから墓場まで」という高福祉がうたわれ、NHS、国民保険サービスという制度によって国民に医療を無料で提供していました。ところが次第に財政負担が重くなり、サッチャー政権は医療費の総額を抑えたうえで、NHSを400あまりの独立行政法人に分割して競争させました。その結果、価格競争がおこって、医師の労働条件の悪化を招き、誇りと勤労意欲を奪われた医師たちは、海外に逃避し、極端な医師不足がおこりました。ブレア政権で見直しがはかられたのですが、そのときの目標が、救急部門の最大待機時間を4時間、病院外来患者の予約の最大待機期間を3ヶ月とすることでした。現在イギリスでは、普通に病院に行くと、まず診てもらえるのは最低でも2日後です。

アメリカ合衆国では、マイケル・ムーア監督が映画「Sicko」を作成しました。その映画では、作業中に左手の中指と薬指を切断してしまった工場労働者の場面が描かれています。ベッドの上でぐったりしている労働者に対し、主治医が、図を示しながら、「治療費は、薬指が12,000ドル(約140万円)、中指なら60,000ドル(約690万円)です。どうされますか。」と尋ねます。健康保険を持っていない労働者は、薬指の治療費を払うのがやっとで、薬指だけつけてもらって中指がない状態で退院します。次に、夫が心臓発作を起こし、妻はガンを患った50代の夫婦が登場します。彼らが加入しているのは、HMOと呼ばれるタイプの、保険料が安い代わりにクオリティも低い保険です。自己負担額を払いきれなくなった夫婦は、娘夫婦の地下室に引っ越すことを余儀なくされます。無念の気持ちいっぱいで、彼らは売りに出されたわが家を見つめています。さらに、悠々自適な引退生活をしていてもおかしくない年齢なのに、スーパーマーケットで毎日働く老人のシーンが映されます。会社を辞めて、福利厚生の一部である健康保険を失えば、薬代が払えなくなるので、保険をキープするだけの目的で死ぬまで働き続けているのです。また、骨髄移植で命が救われるかもしれない、重病の夫を抱える妻が登場します。彼の家族の骨髄がマッチすると判明し、大喜びしたにもかかわらず、保険会社がなかなかお金をおろしてくれません。待っているうちに夫は死んでしまいます。「なぜ」と、良き夫で、良き父だった愛する男性の写真を手にして、彼女は涙を止めることができません。

我が国の医療制度の特徴は@国民皆保険制度、Aフリーアクセス、B民間主導、という点です。国民皆保険制度は、世界に誇るべき、日本民族の叡智の賜であります。病気に罹った場合、患者は医療費の心配をしないで医療機関を受診することができます。また医療機関側にとっても患者の懐具合を気にせず治療に専念することができます。今のところ、日本国は、イギリスやアメリカに比べ、はるかに優れた医療制度を維持しています。しかしながら、国家の財政難から、矢継ぎ早に制度改正が行なわれています。今回の後期高齢者医療制度は、小泉自民党圧勝後、「患者・高齢者・保険者・被保険者の負担増と医療給付費抑制」を掲げて生み出された制度ですので、どこか怖さを感じます。消費税増税という話題も少しずつ新聞紙上に出ています。医師不足、看護師不足、医療崩壊という現実のなかで、医療費抑制が続き、ますます医療環境が厳しくなりそうです。我々としては、医療法人あかね会の理念「いま求められている医療の最高レベルを目指すとともに、明日の医療のあり方に機能しよう」の追求を、堅実に続けたいと考えております。