くすりの窓 2003.5

新緑の美しい季節になりました。桜に始まり、つぎつぎに花も咲き、これからしばらくは、最も気候の良い時期といえます。旅行の計画などたてている方も、多いのではないでしょうか。

しかし、気温が上がってくると、食中毒のニュースを新聞やテレビで目にする機会が増えてきます。集団食中毒が大きく取上げられていますが、トータルでは、家庭における食中毒の方が多いと言われています。そこで、今回は下痢に使用されるお薬を特集します。また食中毒の予防のポイントも、具体的に紹介したいと思います。


下痢に使用される薬

ロペミン
腸の運動を強力におさえます。効果がよく繁用されますが、細菌性の下痢や潰瘍性大腸炎には適しません。予防的な長期連用も避けます。
収斂・吸着・防腐薬
タンナルビン  腸粘膜を保護し粘膜の炎症をしずめます。
アドソルビン  腸粘膜保護作用と腸内の有害物質を吸着する作用があります。
乳酸菌製剤(ラックビー、レベニン
腸にやさしい善玉菌を補い、悪玉菌を追い出します。その結果、下痢や便秘の症状を改善します。抗生物質による下痢を防ぐ目的で併用することもあります。抗生物質によって死滅してしまう善玉菌を補うわけです。強力な作用はありませんが、どのような下痢にも安心して使えます。
抗菌薬(キノロン系抗菌薬、ホスミシン、その他各種抗生物質  
細菌性食中毒や腸炎に用いることがあります。
鎮痙薬(ブスコパン、チアトン
腸の運動を抑え、下痢や腹痛に有効です。細菌性の下痢などでは、避けたほうがいい場合もあります。
消化管運動調律薬(セレキノン  
胃腸の調子を整える作用があります。下痢をともなう過敏性腸症候群に用いられます。
ゲル形成薬(コロネル  
便の固さをほどよくし、便通を整えます。過敏性腸症候群における下痢、便秘の治療に用います。食後に十分な水(コップ1杯ほど)で服用します。口に含まずすぐに飲み込むようにしましょう。
抗炎症薬(サラゾピリン、ペンタサ
潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性の腸の病気に用います。
胃粘膜局所麻酔薬(ストロカイン
過敏性腸症候群で食後に下痢を起こしやすい人に用いることがあります。
燐酸(りんさん)コデイン  
他の薬が効きにくい激しい下痢で用いることがあります。


下痢の原因は、さまざまです。食べすぎ・飲みすぎ、食中毒、過敏性大腸炎など比較的よくみられるものから、潰瘍性大腸炎やクローン病など特殊な病気によるものもあります。

食中毒や細菌性の腸炎にともなう下痢は、有害物質を体外に排出させようとする自然な防御反応であるため、むやみに下痢を止めればよいというものではありません。

急性の下痢症では、下痢を止めることよりも、まず原因をみきわめるこが大切です。

激しい下痢は、脱水症状をまねき、このような場合は、点滴で水分を補給する必要があるため、早めの受診が大切です。

過敏性腸症候群では、下痢と便秘が交互に現れることがあります。症状に合わせ、セレキノン、鎮痙薬、コロネルなどが使われます。ストレスや自律神経失調が原因のひとつとされるため、安定剤や抗うつ薬を用いることもあります。

潰瘍性大腸炎やクローン病には、抗炎症薬のほか、ステロイド薬や免疫抑薬も用います。腸の安静と栄養補給を目的として、特殊な栄養剤を使用することもあります。


食中毒予防のポイント

@ 食中毒菌をつけない。
A 食中毒菌を増やさない。
B 食中毒菌を殺す。

この3原則にしたがい注意点を紹介します。

●食品の購入
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  • 卵や乳製品は、消費期限や賞味期限を確認し購入しましょう。
  • 肉や魚は、新鮮なものを購入し、ビニール袋に入れ、野菜など生で食べる食品にふれないようにしましょう。
  • 早めに家に持ち帰りましょう。
●食品の保存
  • 帰宅したら、冷蔵や冷凍が必要な食品はすぐに冷蔵庫、冷凍庫に入れましょう。
  • 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は−15℃以下に保ちましょう。
  • 食中毒菌は、10℃で増殖が遅くなり、−15℃以下で増殖が停止しますが、死んでしまったわけではありません。購入した食品は、早めに使い切りましょう。
●調理
  • 手はせっけんでしっかりと洗い、手に傷があり化膿している場合は、特に黄色ブドウ球菌が繁殖しているので、手袋や指サックを使用しましょう。
  • 包丁、まな板などの調理器具は、十分に洗浄し、熱湯消毒をしましょう。
  • 解凍は冷蔵庫か電子レンジでおこないましょう。室温での解凍は、食品の表面を長時間に室温にさらすこととなり、食中毒菌は、その間に増殖してしまいます。
  • 熱調理は十分に行ってください。食品の内部温度が75℃、1分以上の加熱を、目安にしてください。
以上に注意し、買ってきたもの、調理したものは早く食べましょう。

下痢の症状があるときは、安静、水分の補給、年齢・症状に応じた消化しやすい食事を心がけましょう。

激しい腹痛・下痢があり、経口摂取がほとんど不可能な場合は点滴など必要ですから、早めに受診しましょう。
                                  
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