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朝夕の寒さが身にしみる季節となりました。
今回のテーマは 保湿と保湿剤 についてです。
2020年11月
冬になると気温の低下と同時に湿度も低下して空気が乾燥しています。しかも、寒い室内ではエアコンなどの暖房器具を使うため空気がカラカラに乾いてしまいます。その影響で肌の水分が空気中に蒸発しやすくなってしまい、他の季節は何ともないのにこの季節だけ肌トラブルに悩む人が多くみられます。
肌の乾燥が痒みの原因にもなるため普段からのケアが大切になります。
ドライスキン(皮脂欠乏症)は、言葉の通り、皮脂の分泌が低下し、角質層に水分が低下して乾燥した状態のことです。これは、年齢による変化、栄養不足、むくみなど様々なことが原因で起こります。皮脂は毛穴から出て、肌の表面を覆い、乾燥から皮膚を守る働きがあります。この皮脂の低下は、肌本来の防御機能の低下をもたらし、外からのあらゆる刺激に敏感になります。
特にこの疾患は、湿度の低い秋から冬によく見られ、中高年の脚や腰、背中によく見られます。乾燥状態を放置しておくと、次第に痒みが出てきます。そして、掻くことによって、炎症を起こし、紅斑(赤みのある発疹)が生じます。
健康な皮膚には角層のバリア機能があり、水分の蒸発や外からの刺激を防いでいます。皮膚は肌の表面の膜となって水分の蒸発を防ぐ「皮脂」、角質層の細胞内で水分を含み、保持する「天然保湿因子」、角質細胞同士をつないで肌の中に留める「角質細胞間脂質」の3つの要素で乾燥を防いでいます。これらの成分が減少すると皮膚が乾燥した状態(ドライスキン)になります。また角層がはがれてすき間ができ、外からの刺激を受けやすくなります。保湿剤は、皮膚の水分が逃げないように"ふた"をしたり、皮膚に水分を与えたりする役割を持っています。そのため、保湿剤を塗る前に水や化粧水で皮膚を軽く湿らせておくと、十分な保湿効果が得られます。健康な皮膚を守るため、季節に関係なく毎日塗ってスキンケアをしましょう。
ワセリンなど保湿軟膏は皮膚の表面に膜をつくり、水分の蒸発を防ぎます。
保湿剤は皮膚が水分を吸収している入浴後に塗るのが効果的です。濡れたままの皮膚は水分の蒸発量が増すため、すばやくふき取り、入浴後は早めに保湿剤を塗るようにしましょう。
市販の保湿剤を購入する時、夏はさっぱりとした使用感の良いもの、冬は皮膚を覆う効果に優れたものが良いでしょう。ただし、尿素が入った軟膏は、引っかき傷等の傷口、亀裂(ひび割れ)部位や炎症の起こっているところに塗るとしみる事がありますので気をつけましょう。
軟膏やクリームの場合は人差し指の先から第一関節まで伸ばした量、ローションの場合では1円玉大の大きさの量が約0.5gです。この量で手のひらの面積2枚分に塗れます。またティッシュが皮膚に付く、もしくは皮膚がテカる程度も使用量の目安になります(ただし保湿剤の種類によっては異なる場合があります)。
保湿剤には軟膏・クリーム・ローション等があります。
塗る場所や使用する目的に合わせて処方されます。
乾燥肌の治療薬として長年使用されている保湿成分です。
高い親水性と保湿性が特徴です。「保湿」「血行促進」「抗炎症」の3つの作用があり、子供からお年寄りまで全身(目や目の周辺、粘膜を除く)に使用できます。
肌内部の角質層まで浸透し、保湿効果を発揮し、肌の乾燥や炎症、肌荒れなどの改善に有効に働きます。
ヘパリン類似物質には水分を引き寄せてそれを保ち続けるという働きがあります。同じ保湿剤であるワセリンは、肌の表面を覆って水分の蒸発を防ぐのに対して、ヘパリン類似物質は角質層まで浸透し、そこで肌に働きかけます。
最近当院でも採用しているヘパリン類似物質の一般用医薬品(OTC医薬品)が複数の会社より販売されるようになりました。
他、かゆみを抑制する成分や血行を促進する成分、肌の炎症を緩和する成分などを配合した製品もあります。
ヘパリン類似物質配合の市販薬は多数ありますが、その形状はクリームとローションの2種類に分けることができます。効能効果は同じですが、使用感や添加物が異なります。
クリームには油性タイプと水性タイプがあり、油性タイプは油の性質を持ち、厚みがある感触で水に落ちにくいのが特徴。水性タイプは水の性質を持ち、伸びやすくさっぱりした感触で、水で洗い落とせるのが特徴となっています。
保湿剤を使用しても肌の乾燥が改善しない場合は、医療機関に相談しましょう。
土谷総合病院 薬剤部