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朝夕の寒さが身にしみる季節となりました。
今回のテーマは 亜鉛 についてです。
2021年11月
亜鉛は体内に約2000mg存在し、主に骨格筋・骨・皮膚・肝臓・脳・腎臓などに多く含まれます。
体内の酵素の構成や酵素反応の活性化、ホルモンの合成や分泌の調整、DNA合成、タンパク質合成、免疫反応の調節などに作用し、身体の成長と維持に必要な栄養素です。
また、味覚に関わる細胞をつくる働きもあるので、食べ物をおいしいと感じるのに欠かせません。
人間の体に必要とされている必須ミネラル16種に含まれますが、体内で作り出すことができないため、食事から摂取する必要があります。
昨今、医療現場でも注目されているミネラルであり、栄養状態を考える上で欠かせない成分です。
成人男性で11mg/日、女性で8mg/日が推奨されていますが、厚生労働省の調査によると亜鉛の実際の摂取量は推奨量より不足しているというデータがあります。
特に妊娠中・授乳中の方は需要量の増加により不足しやすくなります。
亜鉛の摂取量については厚生労働省にて次のように推奨されています。
■味覚障害
味覚には、舌に存在する味蕾という部分の味細胞が関係しています。この味細胞は比較的、短い周期で新しく生まれ変わるのですが、その際に亜鉛が必要となります。そのため、亜鉛が不足すると、この味細胞が新たに生まれず、味覚障害が起きてきます。
■皮膚炎
亜鉛は皮膚にも多く存在し、タンパク質の合成に関わっています。そのため、亜鉛が不足すると健康な皮膚が保てなくなり、皮膚の炎症やかゆみ等、さまざまな皮膚のトラブルが起きやすくなります。
■脱毛
髪の毛の主な成分である「ケラチン」の生成には亜鉛が必要であるといわれています。そのため、亜鉛が不足すると、健康な髪の毛の成長ができなくなってしまいます。また、髪の毛や眉毛等の生えている地肌も皮膚の一部なので、亜鉛不足により健康な状態が保てなくなり、毛根の周囲にトラブルが生じ、脱毛が起きます。
■貧血
亜鉛は赤血球を作る働きに関係しているため、亜鉛不足の人は貧血になることがあります。
■傷が治りにくい
亜鉛はタンパク質の合成や細胞の再生に関わっているため、不足すると傷の修復力が低下し、傷が治りにくくなります。寝たきりの方で、床ずれが治りにくく重症化する人には亜鉛不足がよくみられます。
■食欲低下
亜鉛が不足すると、胃や腸など消化管の働きが悪くなり、食欲が低下します。また、食べる量が減ると、亜鉛がさらに不足するという悪循環を招きます。
■下痢
亜鉛不足で消化管の働きが悪くなることや、腸の免疫機能が低下することから、下痢を起こしやすくなります。
■風邪を引きやすい
亜鉛が不足すると、免疫機能が低下するため、ウイルスや細菌に感染しやすくなります。そのため、重症化したり、症状が長引いたり、繰り返し風邪を引く等の症状が出やすくなります。
■骨が弱くなる
亜鉛は骨の生成に大きく関わっており、亜鉛が不足すると骨が弱くなってしまいます。
■生殖機能障害
亜鉛が不足すると、男性の精巣に発達障害や機能不全が起き、精子の減少、性欲の減退等の症状が現れることがあります。亜鉛不足が男性不妊症の原因になることもあります。
■低身長(成長障害)
亜鉛は成長ホルモンや性ホルモン等発育に関するホルモンの産生や働きにも関わっているため、子どもに亜鉛不足があると身長の伸びや体重の増加に障害が起こることがあります。
摂取する亜鉛の量が絶対的に足りない
食べ物の食べ合わせやお薬との飲み合わせ、疾患などにより亜鉛の吸収が下がる
必要とされる亜鉛の量が多くなっているのに、摂取量が足りない
尿、汗等から過剰に排泄される
普通の食事のみで亜鉛の過剰摂取になることはほとんどないのですが、最近はサプリメントの普及により 亜鉛を多く摂取する機会も増えてきています。亜鉛の摂取が過剰になると、以下のような症状が出ることもあるので過剰なサプリメントの摂取は控えましょう。
■亜鉛過剰摂取による症状
食事によって十分な亜鉛の補充が難しい方や疾患により亜鉛が不足しやすい方にはお薬による亜鉛補充を行うこともあります。
現在日本で使用されている亜鉛補充のお薬には主に2つあります。
これまでに述べたように亜鉛には様々な働きがあり、不足すると様々な症状が出てきます。皆さんもこれからは亜鉛を摂る事を意識してみてはいかがでしょうか?
気になる方は病院の血液検査で亜鉛を測定することも可能です。
ちなみに、広島でよく採れる牡蠣にはたくさんの亜鉛が含まれています。ノロウイルスに気をつけながら、積極的に献立に取り入れましょう。