土谷総合病院

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診療科・各部門

Introduction of Department

子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(uterine artery embolization : UAE)について

UAEとは

子宮筋腫や子宮腺筋症に由来する症状によって低下した生活の質を、低侵襲の手技で改善させるとともに、子宮の形態と機能を温存することを目的とした治療です。子宮を栄養する主な血管である子宮動脈に塞栓物質を注入し、閉塞させる手術です。産科では、危機的出血や遺残胎盤に対する止血目的でも行われます。

子宮筋腫の一般的な治療法

筋腫の位置や大きさ、治療時の年齢などを考慮して、以下から選択します。

  • 手術:子宮筋腫核出術または子宮全摘術(開腹術、腹腔鏡下手術、腟式手術)、子宮鏡下手術
  • 薬物療法:手術または閉経を前提に、一時的(数ヶ月から半年)に使用
  • 子宮動脈塞栓術

UAEの適応

UAEの適応となる場合
  • 過多月経、疼痛などの症状がある
  • 将来妊娠を希望しない
UAEの適応とならない場合
  • 妊娠している、または将来妊娠の希望がある
  • 閉経後
  • 悪性病変
  • 骨盤内の感染症
  • GnRHアゴニスト、アンタゴニスト、黄体ホルモン治療中(治療終了し子宮への血流が回復すれば可能)
  • ヨード造影剤や塞栓用物質の成分に対するアレルギー

UAEの機序、方法、効果

  • 子宮筋腫の栄養血管である子宮動脈を塞栓用物質で満たし、血流を遮断することにより、子宮筋腫を壊死させて縮小を図ります。
  • 腕の動脈(橈骨動脈・上腕動脈)あるいは太ももの付け根の動脈(大腿動脈)から管(カテーテル)を挿入します。血管を造影して子宮動脈を同定し、カテーテル先端を留置します。子宮動脈に塞栓用物質を注入します。左右の子宮動脈にこれを行います。
  • 子宮筋腫の縮小率は50~60%とされています1)。5年以上の観察で、70~90%に症状の改善を認め、再発率は10~30%と報告されています2)

副作用・合併症など

  • 塞栓術後症候群(腹部の疼痛、悪心・嘔吐、発熱):疼痛は、術直後から1~2時間が最も強く、およそ6~12時間続くため、麻薬の持続注射によるコントロールを行います。また、鎮痛剤の座薬や内服も使用します。腹痛、発熱は数日から2週間程度続くことがあります。
  • 穿刺部位の損傷、血腫
  • 造影剤アレルギー
  • 感染症:抗生物質で治療を行いますが、コントロールできない場合は子宮摘出が必要となることがあります。
  • 子宮出血、帯下の増加、筋腫の経腟的排出
  • 卵巣機能不全
  • 次回妊娠への影響:自然流産、早産、胎盤機能不全、胎児発育不全、癒着胎盤、子宮破裂、産褥出血、胎位異常、帝王切開などの増加が指摘されています。
  • 死亡:全世界での報告で、死亡率は0.01~0.02%と推定されます。

当院での治療経験

2015年から2021年まで、61例のUAEを行っています。そのうち、子宮筋腫(子宮腺筋症、子宮出血止血を含む)に対するUAEは55例でした。他の6例は、妊娠出産に関連した疾患に対して行われました。術後の主な合併症としては、程度の差はありますが、塞栓術後症候群を多くの方に認めます。筋腫の経腟的自然排出が8例、UAE後に経腟的に筋腫摘出術をおこなったものが2例ありました。治療を要する感染症が7例あり、そのうち1例は子宮摘出術が必要でした。

入院期間など

手術前日に入院し、手術を行い、2日後に退院します。経過に異常がある場合、それに応じて入院期間が延長されます。症状のある子宮筋腫に対しての治療は、保険が適用されます。

実際の症例

子宮筋腫による圧迫症状の改善を目的としてUAEを行いました。

UAE前、UAE後

UAEから約1ヶ月後に壊死した筋腫が自然排出され、3ヶ月後のMRIでは子宮筋腫はほぼ消失していました。多くの症例では縮小した筋腫は残存しますが、その場合でも症状の改善による生活の質の改善が期待できます。

参考文献

  • Dariushnia SR, et al: Quality Improvement Guidelines for Uterine Artery Embolization for Symptomatic Leiomyomata. J Vasc Interv Radiol, 25, 1737-1747, 2014
  • 勝盛哲也: UAEの治療成績. Jpn I Intervent Raiol 31:233-239, 2016