土谷総合病院

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診療科・各部門

Introduction of Department

整形外科

診療内容

  • 手の外科・微小外科
  • 膝・足の外科
  • 一般整形外科・人工関節手術
  • 腎不全、心不全など全身状態不良例の整形外科手術、下肢温存手術

当科は日本整形外科学会認定研修施設・日本手外科学会研修基幹施設の認定を受けており、リハビリテーション科の理学療法士・作業療法士と協力しながら様々な整形外科疾患を治療しています。

特に手の外科・微小外科領域では、過去20年で1万例の手術を行ってきました。国内外の先進医療を導入して最高の治療を患者さんに提供し、より早い社会生活復帰を応援します。

診療実績

年間平均手術症例数は500例で、このうち85%以上が手と肘関節の疾患です。1997年10月の当科開設から2022度までに施行した手、肘関節の手術症例数は約1万例です。

過去5年間に手・肘関節の手術を行った2136例の内訳を表に示します。

特色

手の外科(手外科)

上肢の外科(手、肘関節、肩関節)のうち、特に指・手・肘関節の治療を専門とする外科領域です。当科では、この領域において国内外で最高レベルの治療を提供することを目標としています。一般的な疾患である腱鞘炎や骨折から重度の怪我による複雑な手機能の問題まで、「動かなかった手を動かす」「出来ないことができるように」を目指し、様々な高度な機能再建・回復手術を行っています。広島手の外科・微小外科研究所の初代所長である津下健哉先生が考案した橈骨神経麻痺の手術や、現所長である木森研治先生が考案した正中神経麻痺に対する手術は全国的にも有名です(Opponensplasty for Severe Carpal Tunnel Syndrome with the Transfer of the Palmaris Longus Tendon to the Rerouted Extensor Pollicis Brevis Tendon. Kimori K, Hachisuka H. J Hand Surg Asian Pac Vol. 2023 Jun;28(3):421-424.)。

木森法(画:蜂須賀)
ハンドセラピィ(手のリハビリ)

手や肘関節の治療で良好な機能回復を獲得するためには、手術だけでなく一貫した指導の下でのリハビリテーションの実践が非常に重要です。当科では治療開始から終了時まで、担当医と作業療法士が協力して個々の患者さんにとっての最良のリハビリを提供できるよう努めています。早期の機能回復には可能な限り術後早期のリハビリが必要であり、当科ではこれを実践しています。

微小外科(マイクロサージャリー)

手術用顕微鏡を用いて体の微小構造を修復する分野で、手の外科では必須の技術です。広島手の外科・微小外科研究所の2代目所長である生田義和先生はこの分野の世界的なパイオニアとして知られています。生田先生から受け継いだ技術や器械を用い、先天異常手の手術、指尖の微小腫瘍の摘出、微小血管や神経の修復・再建、人工神経移植、切断された手指の再接着、失われた皮膚や骨・関節・筋肉・手指などの再建を行っています。怪我や重傷感染により失われた指の関節を再建する方法は、これまで足の指の関節を切除して指に移植する方法が一般的でしたが、当科では膝の歩行に影響のない部分から組織を組み立てて再建する方法を開発し、国際的な評価を得ています(Vascularized Origami Medial Femoral Condyle Flap for Finger Joint Reconstruction. Hachisuka H, et al. Plast Reconstr Surg. 2023 Dec 1;152(6):1297-1301.)。

微小外科手術の様子
最小侵襲手術

指の腱鞘炎手術では出来るだけ切開を小さくして1cm程度の切開で腱鞘切開手術を行っています。手根管症候群、手関節部の骨折、TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷、肘関節の骨棘障害や関節内遊離体などには、関節鏡(内視鏡)を用いた体への負担の少ない手術を積極的に行っています。特に手根管症候群は内視鏡(関節鏡)と当科で開発した器材の使用により、傷をできるだけ小さくして安全かつ確実な治療を目指しています。

最小侵襲手技により日帰りや短期入院での手術に対応できることも増えてきました。できるだけ生活スタイルや要望に応えるようにしており、腱鞘炎や手根管症候群・肘部管症候群、腫瘍切除、手の骨折などを対象としています。

関節鏡手術による手根管開放術
手や指の加齢性変形、リウマチに対する手術

リウマチ性疾患による複雑な手指変形の矯正、断裂した腱の修復や再建、高度に破壊された関節の形成術も実施しています。指のPIP関節(第2関節)、MP関節(付け根の関節)、肘関節の変形に対して人工関節手術を行ったり、母指CM関節(親指の付け根の関節)の変形には患者さんの生活スタイルに合わせた手術(固定術、形成術、人工関節置換術)を行ったりしています。女性に多いDIP関節(第1関節)の高度な変形では、顕微鏡手術により傷を小さくし、早期に生活復帰できるような工夫をしています(日本マイクロサージャリー学会シンポジウムで発表)。

膝関節外科
1)変形性膝関節症

初期の段階では、リハビリテーションや薬物療法、ヒアルロン酸の関節内注射、外側楔状足底板(外側が高い靴の中敷き)の装着などの保存療法を行います。保存療法が無効な症例については手術療法が適応となりますが、方法は変形の程度や患者さんの社会活動に応じ、専門医が判断してご自身と相談しながら決定しています。

①関節鏡下デブリドマン

関節鏡を用いて関節内の滑膜の切除や痛んだ半月板の切除を行います。

②膝周囲骨切り術

主にはO脚の膝に対して、膝周囲の骨を切除あるいは開大して脚の向き(アライメント)を変えることで痛んだ軟骨の負担を減らす手術で膝の変形が軽度~中程度の方で活動性の高い方が適応となります。ご自身の膝関節が温存できるメリットがあります。

③人工膝関節置換術

高度の変形に対して行います。傷んだ関節表面を金属で置き換えるものですが、当科では変形の状態に応じ片側型人工関節を選ぶなどしています。また、最近の人工関節はデザインや材質が改良され耐久性も向上しています。いずれの手術においても術後はしっかりとリハビリテーションを行うことで、活動性を向上させ、日常生活の質を向上させることができます。

膝周囲骨切り術 人工膝関節置換術
2)スポーツ傷害

半月板損傷、前十字靱帯損傷などが代表的であり、関節鏡を用いた手術を行います。半月板損傷はその損傷部位や程度によって切除術や縫合術が行われますが、極力半月板を温存した縫合術を行うように努めています。前十字靱帯損傷は、ハムストリング腱を採取し、再建靱帯として利用する手術を行っています。

足の外科

変形性足関節症に対する関節固定術、中足骨疲労骨折に対する髄内釘手術、外反母趾に対する手術、関節鏡視下遊離体摘出術や外側靱帯再建術などを行っています。

人工関節手術

膝関節、肘関節、肩関節、手指の関節に対して行っています。人工関節置換術は骨を人工物に置き換えるというだけでなく、骨の周りの組織(筋肉や靭帯、神経など)をいかに残し、あるいは除去するという判断が重要です。当科では各々の関節構造を熟知した医師が手術を行うことにより良好な機能成績を得ています。

全身状態不良の患者さんに対する手術

循環器内科・心臓血管外科・人工臓器部(腎臓内科・外科)と連携をとりながら手術を行っています。血液透析を受けている患者さんや心臓手術後の患者さんで、手足の怪我や病気のある場合に対応しています。

下肢温存手術:糖尿病性壊疽

糖尿病で脚の怪我が治らない患者さんに対し、糖尿病内科・皮膚科・心臓血管外科と協力して治療に当たっています。全ての患者さんに出来るわけではありませんが、他院で切断を勧められた患者さんでも足を残し歩行能力を温存する手術を行っています。