土谷総合病院

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診療科・各部門

Introduction of Department

くすりの窓

寒に入り寒さひとしお厳しくなってきました。

今回のテーマは 薬と食品などの飲み合わせ についてです。

 

2022年1月

相互作用とは?

薬の中には、他のお薬や食品、飲み物、嗜好品との飲み合わせによって好ましくない影響が出るものがあります。この影響を相互作用と言います。

例えば、薬の効果が強く出過ぎて副作用が起こりやすくなる、逆に効果が十分に出ず治療が進まないといったことが起きる可能性があります。

普段飲んでいる薬と飲み合わせのよくないものを知ることで相互作用を防ぐことが重要です。ここではいくつか代表的な飲み合わせをご紹介いたします。

ミネラルを多く含むものとの相互作用

  • 抗菌薬:レボフロキサシン、ジェニナック、ミノサイクリン、セフジニル
  • ビスホスホネート製剤:ボナロン、ベネット
  • 甲状腺ホルモン製剤:チラーヂン
  • 抗リウマチ薬:メタルカプターゼ
  • ミネラル、鉄分を多く含む食品:牛乳、ミネラルウォ-ターなど

一部の抗菌薬や、骨粗しょう症の薬であるビスホスホネート製剤、甲状腺ホルモン製剤のチラーヂン、リウマチやウィルソン病の治療薬のメタルカプターゼは、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルや、鉄分、亜鉛と結合し、互いに吸収されにくくなることがあります。

ミネラルのサプリメント、ミネラルウォ-ター、牛乳、ミネラル豊富な食事などを摂取する際は、基本的には2時間以上時間を空けてお薬を内服すれば問題ありません

ワーファリン+ビタミンK

  • ビタミンKを多く含む食品:納豆、青汁、クロレラなど

ワーファリンは血液の凝固にかかわるビタミンKの働きを抑えて、血液を固まりにくくする薬です。

ビタミンKを多く含む食品を摂取すると、ワーファリンの効果が弱まることがあるため、特にビタミンKを多く含む納豆、青汁、クロレラなどの食品を摂るのは控えましょう。

パセリ、しそ、明日葉、ほうれん草などの緑黄色野菜にもビタミンKが多く含まれますが、野菜類を食べないことは難しいため、過剰にならない程度に食べるようにしましょう。

グレープフルーツとの相互作用

グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分には、体内の薬を代謝する「CYP3A4」という酵素の働きを抑える作用があります。

そのためグレープフルーツを摂取すると、CYP3A4で代謝される薬の効果が強く出てしまうことがあります。

グレープフルーツと相互作用がある薬は多く、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。

■カルシウム拮抗薬

グレープフルーツと相互作用がある代表的な薬として、カルシウム拮抗薬があります。カルシウム拮抗薬は血管を広げて血圧を下げる薬で、高血圧や狭心症に使用します。

■スタチン系薬:アトルバスタチン

スタチン系薬は脂質異常症の薬で、血中のコレステロールを低下させます。同じスタチン系薬でもロスバスタチン、プラバスタチンはグレープフルーツとの相互作用の影響は小さいといわれています。

■利尿薬:サムスカ

サムスカは尿量を増やし、体内の余分な水分の排出を助ける薬です。心臓や肝臓の機能が低下している場合の水分貯留に使うことがあります。

■抗不整脈薬:アミオダロン

アミオダロンは脈を整える、不整脈の治療薬です。脈を整える薬は効果が強く出ても不十分でも危険なため、特に注意が必要です。

■免疫抑制剤:ネオーラル、プログラフ、グラセプター、サーティカン

ネオーラル、プログラフは過剰な免疫を抑える薬です。多くの自己免疫疾患や、臓器移植後の免疫抑制に使用します。薬が効きすぎて免疫機能が低下しすぎると、感染症にかかりやすくなってしまうため、この薬も特に注意が必要です。

よくある質問

Q:どれくらい時間を空ければいいの?

グレープフルーツの影響は、一般的に摂取後24時間程度に及ぶといわれています。グレープフルーツと服用する薬が相互作用の影響を受ける時間はそれぞれの薬によって異なります。長いものでは2~4日程度持続するものもあります。
したがって、グレープフルーツと飲み合わせの悪い薬を服用している間はグレープフルーツの摂取は避けましょう。

Q:グレープフルーツの果肉や果皮による影響は?

これまではグレープフルーツジュースに含まれる渋みの成分が酵素を弱くするといわれていましたが、最近ではグレープフルーツの果肉でも同じような作用が起こることがわかってきました。グレープフルーツジュースだけでなくグレープフルーツの果肉や果皮の摂取は避けましょう。

Q:グレープフルーツと似た種類の食べ物でも相互作用は起こるの?

かんきつ類の果実も薬に影響を与えるものがあります。以下の表を参考にしてみてください。

薬に影響を与えるかんきつ類

アルコールとの相互作用

アルコールは多くの薬剤と吸収・代謝などの段階で影響し、血中濃度を大きく変動させるため薬剤との併用は原則避けましょう。

中でも、特に注意が必要な薬剤を紹介します。

■眠気が出やすい薬:抗アレルギー薬、睡眠導入剤、精神安定剤など

抗ヒスタミン作用のある風邪薬、抗アレルギー薬、睡眠導入剤、精神安定剤など眠気が出やすい薬とアルコールの併用には注意が必要です。眠気が出やすい薬とアルコールを併用すると眠気・精神運動機能低下などの副作用が強く現れる可能性があります。

自動車運転や機械作業などに従事する場合は危険なため、抗アレルギー薬内服中はアルコール摂取を控えましょう。

同時服用はもちろん、体内にアルコールが残っている場合も併用は止めましょう。

その他、注意が必要な薬剤を紹介します。

■降圧剤、狭心症治療薬(ニコランジル、一硝酸イソソルビド、フランドルテープ、ニトログリセリン)

アルコールには血管を拡張し、血圧を下げる働きがあります。血圧を下げる薬や一部の狭心症治療薬など、血管を拡張する薬とあわせると血圧が下がりすぎ、立ちくらみなどを起こすことがあります。

■糖尿病治療薬

アルコールを摂取すると、アルコールの代謝に伴い、血糖値が下がることがあります。血糖を下げる薬を飲んでいる期間にアルコールを飲み過ぎると、低血糖が起きる可能性があります。

■解熱鎮痛剤

アスピリンなどの解熱鎮痛剤は、胃が荒れるなどの副作用が起こりやすい薬です。同様に胃のムカムカを引き起こすアルコールとの相性は良くありません。また、カロナールという解熱鎮痛剤は、お酒と一緒に飲むと肝臓に負担をかけてしまうことがあります。

喫煙との相互作用

喫煙は肺がんや呼吸器疾患、その他いくつかの病気のリスクを上昇させることはもちろん、薬の代謝にかかわって、血中濃度を変動させることがあります。ここでは特に注意が必要なものをご紹介します。

■気管支喘息治療薬:テオフィリン、筋肉の緊張を緩和する薬:チザニジン

これらの薬は、喫煙により肝臓の薬を代謝する酵素が強まることで効果が強く出過ぎることがあります。内服中は禁煙するよう心がけましょう。また、どうしても我慢できない場合は医師など医療スタッフにご相談ください。

■経口避妊薬、月経困難治療薬:ヤーズ、ルナベル、フリウェル、ファボワール、トリキュラー

経口避妊薬や月経困難に使用する薬は、喫煙により、血液が固まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症のリスクが大きくなるといわれています。これらの薬を内服する際は、必ず禁煙するようにしましょう。

今回は、薬との飲み合わせに注意は必要な食品について代表的なものをご紹介しました。他にも細かい相互作用がありますので、普段飲まれている薬やサプリメント、健康食品、嗜好品、よく摂取する食品などありましたら、医師や薬剤師にご相談ください。

また、薬と薬の相互作用もございますので、お薬手帳も上手にご活用ください。

飲み合わせの影響は個人差が大きく、ご自身の体質や薬の種類によっても影響の度合いが変わってきますので、なにか気になることがあればご相談ください。