土谷総合病院

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診療科・各部門

Introduction of Department

外科

1. 広島大学第二外科と土谷総合病院甲状腺外科の歴史

① 河石 九二夫教授による甲状腺外科の創設と発展

広島大学第二外科初代教授 河石九二夫は台北帝国大学教綬着任直後から、大規模な地方病性甲状腺腫の実地調査研究に着手し、昭和14年8月、第三回汎太平洋外科会議(ホノルル)において、 台湾の地方病性甲状腺腫についてEpidemic Goiter in Japanというタイトルで講演している。広島大学教授着任後も甲状腺疾患の研究・診療には力を注ぎ、昭和28年には、131Iによる甲状腺機能亢進症治療を開始し、全国各地から甲状腺疾患患者が、広大病院に集まるようになった。

② 江崎 治夫教授による甲状腺外科の大いなる発展

第3代江崎 治夫教授は甲状腺外科検討会(現・日本内分泌甲状腺外科学会)の発起人の1人として設立に深く関与し、甲状腺外科検討会規約委員長として日本の甲状腺外科の基礎創りに多大な貢献した。

特に、反回神経麻痺に関する臨床と研究(牛尾浩樹、 1982)は、 反回神経の縫合再建は術後の呼吸困難、嗄声改善に有効であることを証明し、 甲状腺外科手術の成績向上につながった。この技法は宮内昭先生の反回神経再建術の工夫によって更に発展した。

③ 土肥 雪彦教授時代の拡大手術への挑戦

第4代土肥教授時代には武市宣雄が甲状腺疾患を担当し、チェルノブイリ原発事故(1986年)の検診と研究や原爆被爆者に多発している副甲状腺腫瘍、副甲状腺機能亢進症についても調査報告を継続した。1991年からは杉野圭三が参加し、臓器浸潤を伴う進行甲状腺癌手術や未分化癌治療に挑戦を始めた。

④ 土谷総合病院における甲状腺外科の継承

江崎教授は退官後、土谷総合病院で甲状腺外来を開設し甲状腺診療を開始し、2004年(平成16年)からは、杉野圭三が赴任し本格的に甲状腺外科治療を継承することとなった。甲状腺癌の中でも重要臓器(気管、 食道、 反回神経、大血管、 縦隔など)に浸潤する進行甲状腺癌の機能温存と根治性を両立させるという難問解決の可能性も追求し、食道部分切除・全層縫合、気管切除・再建、内頸静脈部分切除・再建などの術式で機能温存を試みている。

特に、反回神経浸潤を伴う進行癌に対する神経鋭的剥離温存術や様々な神経縫合技法を応用した神経再建術にも挑戦している。

参考文献:
土肥雪彦、武市宣雄、杉野圭三。広島における甲状腺外科の歴史、日本内分泌外科学会雑誌。36:196-200,2019.

2. 土谷総合病院甲状腺外科の実績

当院は広島大学第二外科でこれまで行われてきた甲状腺疾患の外科治療を継承するための施設として位置づけられ、難治性甲状腺癌を含む最先端の治療を行う方針です。甲状腺治療において60年以上の継続した治療実績は当院で継承され、最適の治療法を提案することができます。平成元年(1989)から2020年までに約4000例(3959例)の手術を経験しています。この中で、悪性腫瘍は2758例(約70%)です。良性腫瘍や甲状腺微小癌に関しても経過観察などの説明と同意に基づいて、手術適応を厳格に決めています。最近の手術件数の推移を示します。

手術件数推移

当院の最近の年間手術件数は200-230例/年です。全国の甲状腺手術を行う病院の中では第7位の件数でした。

手術数でわかるいい病院2020

外来診療は土谷総合病院で初診診療、手術を行い、中島土谷クリニック甲状腺外来と連携し、再診の外来フォローアップを行っています。甲状腺疾患の診察で最も重要なエコー検査は最先端のエコー機器を導入し4000-5000例/年、穿刺吸引細胞診はエコーガイド下に繊細な手技を行い、約1500件/年のデータとなっています。

エコー検査数推移

3. 土谷総合病院甲状腺外科の手術適応

当科で手術が必要と考える疾患は以下の通りです。

悪性疾患

①甲状腺癌

  • 腫瘍径が1cm以上
  • 腫瘍が甲状腺被膜を超えて浸潤、発育するもの
  • 画像上、リンパ節転移を疑うもの
  • 細胞診で通常の乳頭癌ではなく、悪性度が高い腫瘍の疑いがあるもの

以上の危険因子があれば手術適応と考えています。

②微小癌に対する手術適応

腫瘍径1cm以下の危険度の低い甲状腺癌に対しては、生命に対する危険度が低いので積極的に経過観察することも可能です。しかし、前述の危険因子がある場合は手術適応です。また、腫瘍径が小さくてもリンパ節転移を伴うこともしばしばあり、本人・家族とも十分に理解と納得されることが条件となります。
参考:日本内分泌外科学会 甲状腺微小癌取り扱い委員会による提言(2020)

③再発甲状腺癌

再発症例は基本的に手術適応と考えます。
再発は初回手術時の進行度がすべてを左右します。即ち、腫瘍径、被膜外浸潤、リンパ節転移、病理組織型などの危険因子の有無です。再発部位と状況によっては、化学療法や放射線治療の併用も必要となることもあります。

④悪性リンパ腫

橋本病(慢性甲状腺炎)の経過中に、稀に甲状腺腫大が起こり、悪性リンパ腫を併発することがあります。橋本病の経過中に、時々エコー検査を行う必要があります。診断は穿刺吸引細胞診だけでは不十分で、局所麻酔による組織生検や腫瘍切除による病理検査が必要となることもあります。

良性疾患

①バセドー病

治療の基本は抗甲状腺剤(メルカゾール、チウラジールなど)の内服治療です。薬物療法で寛解導入困難であれば、欧米ではアイソトープ治療が行われます。
薬の副作用(白血球減少、肝機能障害、湿疹など)で継続不能な時、コントロール困難な場合、若年女性で挙児希望がありアイソトープ治療を行いたくない時は外科治療も考慮する必要があります。

②巨大良性腫瘍

良性腫瘍の中でも濾胞状腫瘍は良性の濾胞腺腫と悪性の濾胞癌との鑑別が細胞検査や画像診断でも困難であり、悪性に準じて考える必要があります。濾胞状腫瘍で3cmを超える場合はそろそろ手術を考える時期で、5cmを超えれば手術をお勧めします。
また、腫瘍径が大きく画像上で悪性が疑われる場合も手術を考慮する必要があります。

③縦隔内甲状腺腫

甲状腺腫瘍が縦隔(胸部)へ伸展し、巨大化すれば気管、食道、大血管、神経などを圧迫することがあります。殆どの縦隔内甲状腺腫は良性であれば、頸部操作で摘出可能ですが、反回神経を縦隔内で巻き込むこともあり、慎重な手術操作が要求されます。増大傾向のある腫瘍の場合、巨大化する前に手術を行うことが重要です。

④原発性副甲状腺機能亢進症

副甲状腺腫瘍は放置すると全身に悪影響を及ぼすため、エコーやシンチ検査などで腫瘍の局在診断ができれば手術適応となります。

4. 甲状腺外科トピックス

5. 甲状腺外科草子